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「どうしたいか」に出会っていく旅

2022年8月31日

 こんにちは。青砥美穂です。

 あんなに暑かった日々から急に涼しい日がやってきて、あっという間に秋になりましたね。

 秋は、紅葉をうっとりボーッと(笑)眺めたり、秋ならではの美味しい食べ物をいただいたり、重ね着をしたりブーツをはいたりなど夏とはまた違うおしゃれをしたり、、私は四季の中で秋が一番好きなので、こんな妄想をするだけでもう楽しくて仕方なくなるのですが、皆さんはどんなふうに秋を楽しまれる予定ですか?

 さて、前回のブログでは、心が疲れ果ててしまっていた子どもが、少しずつ癒され自信やエネルギーを取り戻し、自分を大切にし始めるところまで書かせてもらいました。

 今回は、ここから「どんなふうに『自分のやりたいこと』のタネを見つけていくのか」、そしてその時もしも一緒に伴走させて/成長させてもらうチャンスを私たちがもらえたならどんなことを心にとめておいたら良さそうか」「何ができそうか」ということを一緒に考えさせていただけたら嬉しいです。 

 *もちろん唯一解はないですし、子どもによって、状況によって違ってくるのですが、いくつかの例として少しでも参考になれば嬉しいです。 

 少しずつ癒されてエネルギーを取り戻してきた子どもたちからは、新たな願望やモチベーション、アイデアなどの「新しい欲求」が飛び出してくるようになります。

 その「新しい欲求」こそが次なるステップなのですが、それらはうっかりしていると見過ごして(聞き過ごして)しまうようなことかもしれません。 

 たとえば、

「星空が見たい」「髪を染めたい」「ネイルをしたい」

 「痩せたい」「友達が欲しい」 

「もっと自分の趣味や興味を深めたい」などなど 

 「えー!そんなこと???」と思われることも混じっているかもしれません。

 これまで子どもたちの話をきかせてもらってきて、それらの欲求には大きく2種類あると感じています。

 1)それを満たすことで初めてさらなる本当の自分の願いと出会える「通過点的な欲求」

 2)本当にこれからやりたいことにつながる重要な「タネの欲求」

 どちらも「これからどうしたいか」に繋がっていく欲求なので、どう向き合うか(応援できるか、邪魔しないか)も非常に重要です。

 向き合う際、役に立つことが多かった3つのポイントをまとめてみました: 

 

 ① 否定するのではなく面白がる

 ② それをワクワク深掘る

 ③ 行動を後押しする 

 一つ一つみていきましょう:

① 否定するのではなく面白がる

  まず、どんなことがでてこようと決してそれを否定しないこと、そしてそれを一緒に楽しむことがファーストステップだと感じています。

 やっとエネルギーと自信を取り戻しつつある子ども(大人もですが)は、否定されたらまたすぐに殻に閉じこもってしまう可能性がとても高いです。しかも、その出てきたアイデアの裏には重要な情報が隠れていることも多いです。

 それなので、たとえ心の中に「えー!なんで??」とか「それはやめようよ。。。」「そんなことして何になるの?」などの言葉が浮かんできても、一旦その子の考えをさらに聞く方にフォーカスしてみませんか。

 

「おもしろいね!」「楽しそう!」「わーお、新しい!」などなど。

 たちまちその子たちの表情が明るくなって、「思い」をもっと話してくれるでしょう。 

 

② それをワクワク深掘る

 出てきたアイデアや願望を受け入れた後、それらをワクワク深掘っていきます。私はこの作業が大好きです。深掘るための質問や対話を通じて上記の2種類の欲求のどちらかなのかそれ以外なのかということを知れたり、その情報からその子の、その子ならではの特性を知ったりできるからです。

 

「どうしてそれがやりたいの?」「どうしてそれが欲しいの?」「どうしたらそれができるかなあ?」などなどたくさん質問します。 

 このとき、ワクワクなどのポジティブな感情をもって深ぼっていくというのがポイントだと感じています。子どもはとても敏感なので、こちらがどういう心持ちで質問をしているのかはすぐに見破ってしまいます。ネガティブな感情に気づくと、そこで共有がストップしてしまったり、本人の思考自体も止まってしまったりなどというもったいない状況に陥る可能性が高いです。

 その子の今、そしてこれからの可能性を心から楽しみながら話し合っていくことで、本人も自分の知らなかった本当の自分の気持ちや欲求にどんどん気づいていけるでしょう。

 2つの例を紹介します:

a) 「髪を染めたい」と話してくれたMちゃん

 これは意外にもとても多いのですが、高校生のMちゃんは髪を染めたいという欲求を共有してくれました。なんでそうしたいかというのをどんどん深ぼっていくうちに、本人が言いました。「これまで校則やルールがたくさんある生活をしていてずっと抑圧された気持ちでいたみたいだから、まずは髪を染めることでそこを開放したい!」「あとは単純に染めてみたい!」と。(この気づきが髪を染めることをやったあとに出てくる子もいます)

 もちろんこの類の欲求は親御さんの価値観や学校の規則などでできるかできないかが分かれてきますが、そういう欲求を満たして気が済んで、初めて次の欲求(将来につながるようなこと)がでてくる上記の1)の欲求であることが多いです。(Mちゃんもそうでした)

 

b) 「友達が欲しい!」と話してくれた(ずっと学校に行っていなかった)Nくん

  中学生のNくんは、ある日「僕は、やっぱり友達が欲しい!」と話してくれました。

 「えー!素敵。」「どんな友達が欲しいの?」 「いつからそう思っていたの?」「どこにそういう友達がいるかなあ?」などなど質問していくうちに、

 「あんなに嫌いな学校だったけど、本当は学校または学校のようなところにまた通って、そこで会える友達が欲しい!」という自分の欲求に気がついたようです。

 そこからさらに「『学校』と言ってもどんな学校なのか。」「前に行っていた学校なのか違う学校なのか」「その学校はどんな環境なのか」「その求める環境にどうやったら出会えるのか」「どこにあるのか」などたくさん話し合いました。これは上記2)のこれからやりたいことに繋がる欲求でした。

 そしてどんどん深掘りをしていくうちに、行動を起こす必要があるフェーズにたどり着きます。

 

③ 行動を後押しする

 「新しい欲求」をどんどん深掘りして気がついた「本当の欲求」を実際にやってみる、つまり「行動」にうつすタイミングがやってきました。それまで止まっていたり、ヘトヘトになっていたりした子どもたちにとって、せっかく出てきた「本当の欲求」を行動にうつすサイクルをつくっていくことはとてもとても重要です。

 ですが、自分でやりたい!と思っていたことでも実際やるとなると二の足を踏んでしまったり尻込みしたりすることは非常に多いです。色々頭で考えているうちに不安や恐怖がわいてくるからです。 これはみなさん、経験のあることなのではないでしょうか(私は大アリです笑)

 それなので、行動の後押しをさせてもらいます。

 ここでもまた大切なことが2つあるのではないかと感じています:

 1)失敗しても大丈夫であること、どう大丈夫なのかをできるだけ具体的に共有する

 2)さらにやりたくなるようなスパイスをかける

 まず、1)ですが、そもそも私たちは失敗が許されない雰囲気の中におかれることが多いです。そんな状況では、新しい挑戦や行動をやりにくいのも当然です。ましてや、しばらく成功体験を積めないまま閉ざした生活をしていたなら尚更です。それなので、「失敗して当然!」くらいの雰囲気をつくることが重要だと思います。また、どう大丈夫なのかも具体的に一緒に考えておくとさらに安心して行動に移せると思います。

 髪を染めたかったMちゃんは、やっとご両親にOKをもらって髪を染めることにしたのですが、直前になって「やっぱりやめたい」「自分はきっと何をしても似合わない」と言い出しました。

 それなので、話し合いをして「何か新しいことに挑戦することは、それ自体学べることがたくさんあるからやってみてもいいかも」ということ、「もし失敗したら(似合わないと思ったり、気に入らないと感じたりしたら)さらに違う色にしたり、元にもどしたりすればいいだけ」ということを話し合いました。そして安心したタイミングで、「ものすごく似合って毎日鏡を見るのが楽しくなる可能性もあるよね!」とか「どうなっても自分が色を変えたらどうなるのか、何が似合って何が似合わないのかを知るチャンスじゃない?」など、2)のさらにやりたくなるエッセンスも話し合いました。

 それによって「確かに!」と心を軽くして髪を染めたMちゃん。何色かのカラーを楽しんで1年ほど過ごしたある日「私、もう気が済みました。やりたいことやったから将来に向けて真面目に勉強したくなりました!」と言い出し、今は「SDGsに関連した事業で起業したい!」と動き出しています。

 また、ずっと学校に行かずにいたNくんも、やはり「また学校に行ってもうまくいかなかったらどうしよう」とか「結局友達ができなかったらどうしよう」と心配し出し、行くのをやめたくなりました。それなので、「もし本当にその学校がダメだったら通信制の学校に転校する」というオプション、「同時に習い事や趣味の世界も広げて学校以外の場所でも趣味や興味でつながる友達もつくる」というオプションを一緒に考え出しました。

 それにより勇気を出してまた外の世界に出て行ったNくん。そこからうまくいったりいかなかったりを繰り返しながら、さまざまな経験を積みながら、今は元気に通信制の学校に通って友達をたくさんつくり、大好きなプログラミングをもっともっと学ぼうとしています。

 二人の例は、もちろんこれで終わりということではなく、まだまだ旅は続いていきます。「どうしたいか」というのは時間とともに変わっていく、または何かを経験するからこそ変わっていくことで、人生を通じて向き合っていくことなのかもしれないですね。そのとき、自分の思いを大切にして行動に移していく成功体験(失敗も含めて)を持っておくことは助けになるのではないでしょうか。

 これ以外にもたくさんの例がありますが、こんなふうに欲求を知り、深掘り、行動をおこしていきながら自分のやりたいことに少しずつ近づき、エネルギーや自信もさらにさらに蓄えていく子どもたち。やはり、一人一人眩しい特性をもっているなあといつも感動させられます。

 そんな子どもたちと一緒に過ごしていくことで、こちらも学べることやもらえるエネルギーもものすごく大きいです。私自身ももっともっと行動したくなって、自分のやりたい!をもっと自分で応援できるようになった気がしています。子どもたちに「こうしたらいいよ!」というより「私もこうしているよ!」と言える自分でいたいなあと強く感じています。

 自分の「どうしたいか」に出会っていく旅、決して簡単ではないかもしれないですし、一つたどり着くのに、数年、いやもっともっとかかる子ども(大人も)もたくさんいます。(そしてそれは上述したように一つたどり着いたらまた次と生涯続くことなのかもしれません。)

 その最初の一歩を、もし一緒に取り組ませてもらえるチャンスをもらったなら、気長に楽しみながらその子ならではの未来をワクワク創っていってみてはいかがでしょう。



お読みいただきありがとうございました。

続いて音声による神経科学の視点からのコメント あおとのぉとはこちら

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