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空想地図作家さんに学ぶ

「無目的な夢中」が導いてくれる世界

〜努力は夢中に勝てない〜

2022年9月14日

こんにちは。青砥美穂です。

先週末は久しぶりにまた夏が戻ってきたようなお天気でしたね。

私は、油断して身体に日焼け止めを塗り忘れたまま娘とお友達家族と海辺に出かけました。子どもたちは、自然を楽しむ天才ですよね。海の中に泥団子を永遠に投げ続ける娘。カニや虫をずーっと探している娘の友達。夢中になっている2人とどくらいそこで過ごしたんでしょう。おかげで今日も私の肩は日焼けでヒリヒリしていますが(笑)、子どもたちの好奇心、夢中になって遊ぶ姿とそのパワーにあらためて感銘を受けた週末でした。

今回は、こんなふうに目的ベースではなく「無目的に」自分の好奇心の赴くまま、夢中になって何かに没頭する素敵さと、そんな力が連れて行ってくれるかもしれない世界について共有させてください。

 

 ● 「努力は夢中に勝てない」

 子どもたちをみていて思う言葉であり、好きな言葉の一つに「努力は夢中に勝てない」があります。

「努力」と「夢中」の違いを考えてみると、努力は「何かの目的に向かって積み重ねている状態」で、夢中は「目的がどうこうではなく純粋に今それをすることが楽しい、好きだ、というような状態」なのではないでしょうか。その二つのパワーが違うのは当然かもしれません。

 

「夢中」が生み出すものすごい「集中力」「閃き」「喜び」などをこれまでたくさんみせてもらってきた私は、子どもたちの「夢中」にいつも魅了されています。そして、「夢中」の中にこそ、それぞれの子どもたちの特性(ユニークネス)や学びの原動力である「好奇心のタネ」が詰まっていると感じています。(この辺りは脳的にも明らかなので、ぜひこのブログ記事に関する神経科学の視点からのコメント「あおとのぉと」もきいてみてください!(リンクはこのブログの下の方↓にあります))

 

●「目的重視」が潰してしまいかねない「夢中」  

 ところが、私たちの日常は、「それをして何になるのか?」という問いや「目的がなくてはいけない」という風潮に溢れている気がしています。子どもたちが夢中になってやっていることに対して「それは無駄」という言葉を投げかけて、せっかくの夢中が消えかけたり消えてしまったケースは多いのではないでしょうか。またご自身に対しても心の中でそういう声がけをされていませんか?(こんなことを言っている私も、ついついやってしまうことがあります。。)

 これはとてももったいないことだと思います。もちろん、目的をもつことも非常に大切で、それにより偉業をなしとげたり、進みたい方向に進めるなどアドバンテージもたくさんあることは全く否定しません。

 と同時に、前述したような「集中力」「閃き」「喜び」「ユニークネス」「学びの原動力である好奇心」などは無目的な夢中の中にこそ詰まっている可能性が高いと感じています。そして、それが、「楽しい学び」や「幸せ」、その人ならではの人生につながっていくと思うのです。

 目的ベースで何かに取り組むこと、無目的に何かに夢中になること、どちらもとても大切ではないでしょうか。

 

 ●空想地図作家さん

 私の尊敬している友人の一人に今和泉隆行さんという「空想地図作家」さんがいます。

 幼い頃から地図にものすごく興味をもっていたという彼は、7歳くらいから自分の好奇心の赴くままに空想地図、つまり自分の想像の世界の地図を書き始めたそうです。

 そして、それをずっと続けているうちにそれを仕事にしてしまいました。テレビのお仕事や本の執筆のお仕事、ゲームやドラマの架空の地図の作成、グーグルマップのゼンリンさんのアドバイザーなどなどたくさんのお仕事に繋がって行ったようです。 

 ですが、本人もそれをプランしていたわけではなく、またゴールを設定していたわけでもなく、自分の好奇心、情熱に従って進んで行った結果、自然と今のような状況になったとのことでした。 

 もし彼の「空想地図」づくりの活動に「それは何になるの?」などと「目的ベース」の思考が深く入り込んでしまっていたら今の彼の状況はなかったでしょう。

 もちろん、今和泉さんのようにうまく仕事に結びつくケースばかりではないかもしれません。ですが、ここでも「仕事に結びつけること」だけが目的ということではないと思います。

 

●ディズニーが大好きだった中学生

 以前、ディズニーが大好きで、ディズニーに関することならなんでも知りたくて、夢中でたくさんリサーチしている生徒がいました。もちろんこれは何かのゴール設定に基づくものではなく、ただ好きだから、楽しいからという強いモチベーションとともに取り組んでいることでした。そしてあるとき、ディズニーの情報なら英語で調べたほうがずっと内容が豊富だと気づいたようで、そこから英語をつかってディズニーに関わることを調べたり関わったりしたそうです。疲れを知らない好奇心の塊となり、どんどん英語を使って趣味を楽しんだ結果、さらにディズニーの世界を広く深く楽しめたのはもちろん、英語の成績がぐんぐん上がって、帰国子女にも劣らないほどの英語力を身につけました。

 普通に「テストで何点を取りたい」などの努力をして学んでいた場合では決して辿り着かない力が「夢中」になることにより身についたのです。やはり、努力は夢中に勝てないなあと、そのときも驚きと尊敬の念が湧きました。

 このように、大人からすると「何になるの?」と思うような子どもの無目的な「夢中」が連れて行ってくれる素敵な世界があります。それをやっているだけですでに楽しい、好き、幸せなのに、さらに素敵な世界につながっていく可能性があるなんてすごくラッキーですよね!

 上記2つの例の他にも、たくさんの事例があります。

 また、子どもだけでなく今私が一緒にお仕事させてもらっているDAncing Einsteinも、何か新しいことを始める際に目的ベースだけでなく、「面白いと感じるかどうか」をとても大切にしています。そうすることで、仕事を純粋に楽しめるだけでなく、自分のユニークネス(特性)、組織のユニークネスをいかしたり、幸せに繋げて行ったりすることができ、その輪をさらなる仲間やクライアントさんたちにも広げてさせてもらっている気がしています。

 私たちが多くの場合大切にしている「目的。」それを大切にしながらも、あえて「無目的」な夢中や情熱を意識的に大切にすることで広がる新しい世界、幸せ、パワーがありそうです。

 空想地図作家さんのような聞いたことのない職業を創り出し、自分のユニークネスを楽しんでいく人たちが増えていくのでは、とワクワクしてしまいます。

 子どもたちもたくさんみせてくれる無目的な「夢中」、ぜひをみかけたらそんなことを思い出しながら対話されてみてはいかがでしょう。その子ならではのユニークネス、好奇心、一緒に大切にしていけたらいいですね。

お読みいただきありがとうございました。

続いて、この内容に関する神経科学の視点からの音声コメント「あおとのぉと」はこちらです: