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困難の中で、状況を捉え直す問いとタイミング

〜What else can this mean? 〜

2022年5月25日

 こんにちは。青砥美穂です。

 5月もあと少しで終わろうとしていますね。

 「5月病」という言葉がある通り、5月は精神的にも肉体的にも苦労して過ごした子どもたち、大人たちも多かったかもしれません。

 特定の理由があるわけではないけれどなんだか鬱々とするケース、本当にショッキングなことがあって落ち込んでしまうケースなど色々なパターンがあると思います。もちろんこれは5月に限ったことではないのですが、4月に新しい環境の中で過ごすことをスタートさせた方々はやはり疲れが出やすい時期でもあると思います。ご自身、または大切な人がそんな状況にありそうなときは、少しでもチャンスをみつけて癒しの時間、愉快な時間、ワクワクする時間などを持ってくださいね(^_^)

 さて、今日は、「5月病」に少し近いテーマで、「逆境」とどう向き合うか、子どもたち、生徒たちが気づかせてくれたことを共有させてください。

 ● What else can this mean?(これは他にどんなことを意味しうるのか?) 

 これは、学生たちから教えてもらい、とても大切にしている問いです。その状況の「目に見えるわかりやすい辛い有様やその意味」の他に、この状況が意味しうるポジティブなことを考えてみる、感じてみる、自分でつくりだしてみる、という挑戦です。リフレーミングという言葉で表現されることもありますね。

 以前、ある高校生が、長い間一所懸命続けてきたスポーツ競技をやめる、手放すという決断をするに至ることがありました。幼い頃からずっと続けてきたことで、とても得意だったし、彼女自身も他の色んなことを犠牲にしながらそれに懸けてきていて、高校もその競技で推薦で入学しました。が、骨格の問題で突然そのチームにはもういらないと言われてしまったのです。

 「首になった」と彼女は言いました。スポーツの世界にはとても厳しいことがあるんですね。もちろん、自分が続けたいなら今のそのチームでなくても競技を続けることができますが、彼女は色々考えたりやってみたりした結果第一線で続けられないのなら退くという決断をしたのです。

 当然、その決断をするのは簡単ではありませんでした。何度も相談し、夜中に電話で話したこともありました。どん底の状況、気持ちの中で、何も考えられなかったり、自分の本当の気持ちがわからなかったりしたタイミングもありました。ただただ泣くことしかできなかった時間もありました。

 ですが、しばらくして彼女は言いました。「きっとこれはチャンスなんだと思う。別のことを始めるチャンス。今はすごく辛いけど、辛いからこそ、『この経験があってよかった!』と言える未来をつくりたい!!」と。

 その未来がどんなものか、そのときはわからなかったけれど、とにかくこの辛い出来事をきっかけに良い未来をつくれるよう、そこから彼女の試行錯誤は始まりました。

 その競技に間接的に関わることをやっていくこと、別のスポーツをまた極める努力をすること、スポーツ以外のまったく違う世界にいくことなどなど、色々考えてあれこれ動き出した結果、外国の大学に進学して多様な人たちと一緒に学んでみたい!という夢ができ、そこに向けて頑張り始めました。 

 そこから、今までその競技に費やしていた時間や工夫や情熱を行きたい海外の大学と奨学金取得への勉強にあてることにしました。それまではスポーツばかりしていてろくに勉強もしていなかったのに、決めた後の集中力はやはりすごいものがありました。何かを極めてきた力を別のことに向けるとついには世界のトップ校の一つに合格したのです。

 彼女は言いました。「あの時私は、『首になった』と思ったし実際そうだったのだけど、同時に『もっとエキサイティングでもっと自分に合う未来に導かれた。』」と。

 過去に起きたことは変わらないけれど、意味づけは未来の行動や思考でいくらでも増やしたり変えたりできる、その希望をもつこと、そして試行錯誤することがとても大切だと教えてもらった出来事でした。そして、もちろん、長い人生の中でその意味づけや価値は変わり続けるのかもしれません。

 最近読んだ雑誌で「この一年がなんだったのかを理解するには少なくともあと5年はかかる」という言葉に出会いました。人生ってそういうことの連続なのかもしれないと思いました。 

 とはいえ、違う意味づけや捉え直しをしていくのはそんなに簡単な道のりではありませんよね。ですが、私たちにはみな望むのならば、逆境を、全てではなくても学びやチャンスに捉え直す力を持っていると思います。

 私も、子どもたちや学生たちに学ばせてもらい、何か辛いことが起きると"what else can this mean? "とまず自分に問いかけるようになりました。人それぞれ色んな価値観があると思いますが、私は、「困難を役立てる」という強い決意を子どもたちからプレゼントしてもらい、その決意が困難が起きた時の私をもう最初から支えてくれているように思います。

 ●タイミング

 「この困難は他にどんなことを意味しうるのか〜"What else can this mean?"~」という問い。もしかしたら、私たちは、これに似たような問いを自分の大切な人が何かに苦しんでいるときにしがちかもしれません。

 ですが、この問いを自分以外の誰かにする場合、タイミングがとても重要かもしれません。というのも、辛くて辛くて仕方ない時にこの問いをされても、何もうまれないどころか、逆効果になってしまう可能性が高いからです。そこから何か大切なことを学んだり作り出したりしたほうがいいなんて頭ではわかるけれど、辛くてそんなことができる状況じゃないということも多いと思います。

 先程の高校生も、最初はパニックで大変だったそうです。事実を受け止めるのにものすごく時間がかかり、冷静にこれからのことを考えることもできないし、正論を言われてもさらに傷ついたり反発したくなるだけだったと話してくれました。

 そんな状況でまず大切なことは、傷ついた自分、苦しんでいる自分をもまるごと受け入れて安心できる環境や状況をつくりだすことでしょう。心理的安心安全がつくられてはじめて、次のステップに進めるのだと思います。

 このタイミングを誤ってしまってさらに問題や関係が悪化してしまうケースもみてきました。

 また、ある程度落ち着いた後でも、自分がどうしたいかを本当に理解するまでにはさらに時間がかかり、試行錯誤の時間も必要になってくると思います。試行錯誤しながらやってみるから、「違った!」「そうだった!」とわかることがたくさんあると思います。先程の彼女も実は、最初は別のチームに入ってその競技を続けることを選択しようとしたのです。が、やっているうちにもう情熱を燃やせない自分に気がついたのでした。

 どうしようもなく辛い困難の中で、まずはどんな自分も受け入れてもらえると感じたり、癒やされたりする経験、その後にその中で少しずつ自分が進みたい道を模索していくというプロセスがとても大切で、そこがこれがスタートになるということを覚えておきたいと思っています。

 自分も、自分の大切な人も、人生で必ず出会う「逆境」。自分ならではの学びや愛、未来につなげて行けたらいいですね。

 

 お読みいただきありがとうございました。